「心を掴むHPをつくろう」
『儲かる!! オンラインショップ開店指南』
(2000年12月/オーム社)

全文(一部省略)

ーー執筆=当社代表 高橋 晋ーー

第1章 アイドマとコンセプト

iショップの表現法則

 iショップを運営する以上、少しでも「売れるサイト」にしたいと願うのはオーナーであれば当然であろう。しかし、いったいどうすればーーー。iショップにおけるサイト表現は、オーナーばかりでなく、ウエブデザイナーにとっても頭の痛い問題だ。というのも、どんな表現が売上アップをもたらすのか、きちんとした方法論がまだ確立されていないからである。

 その一方、実際に売れているiショップをみると、それぞれ個性的なつくりの中にもいくつか共通の表現要素を発見することができる。店主の顔写真、語りかけるようなコピー、情報量の多さ…。こうした共通の表現要素の存在は、iショップにも一定の表現法則があることをうかがわせる。というより、そもそもiショップといえど、商品情報を伝えるための「メディア」である以上、そこには人間の購買心理にかかわるデザイン上あるいは表現上の法則が働いているとみて間違いないだろう。

 では、iショップにおけるこの表現法則とは、いったいなんであろうか。またそれはいったいどのようなものなのであろうか。 結論からいおう。それは、AIDMAの法則である。

 

AIDMAの法則

  AIDMAの法則というのは、消費者が商品情報に接触してから購入にいたるまでの過程を分析したもので、購買プロセスモデルとよばれている。AIDMAによれば、消費者はまず商品に注意を向け、興味をもち、その後、欲しいという欲求を感じ、さらに商品名を記憶し、最終的に購入にいたるとされている。 このAIDMAの法則は、購買モデルとしてはもちろん、広告制作モデルとしてもよく知られている。なかでも直接的な売りを目的とする通信販売の世界では、いまなお有効性をもつ表現モデルとして高く評価されている。

 ところで、直接販売が目的という点ではたしかに通信販売と同じだが、iショップという新しい販売手法に対しても、このAIDMAがそのままあてはまるものだろうか。そのあたりの確認もふくめ、ここで一度、iショップにおける購買行動を、AIDMAを使って追跡してみよう。

  iショップで買い物をしようという場合、最初にお客さまが接触するのは、一般にサーチエンジンによる検索結果や広告情報(ここにはテレビや新聞、雑誌広告などのマスメディア広告、さらにメールマガジンによる広告やバナー広告などがふくまれる)などである。そしてこうした告知情報は、お客様に対してiショップへの注意を引きつけ、興味をもたせるはたらきをする。これはAIDMAモデルでいえば、ATTENTIONおよびINTERESTの2段階に相当しよう。 ここでもし、お客さまに興味をもたせることができたら、とりあえず半分は成功だ。あとは、アドレスを入力するなり、リンクをクリックするなりして、お客さまが自らサイトにアクセスしてくるだろう。

 それではiショップにアクセスしてきたお客さまが次にとる行動は、いったいなんだろうか。それはおそらく、そこに自分の欲しい商品があるかどうかを確認することであろう。そして、もしそこにお目当ての商品を発見したなら、お客さまは商品説明文をじっくり読んで購入を検討するはずである。これがAIDMAモデルでいうDESIREの段階だ。

  さてAIDMA理論によれば、つぎはMemoryという段階がくるのだが、iショップの場合、これはあまり重要ではない。かわりにここでは、確信(Conviction)という段階をもってこよう。その理由は、最近の消費者は商品がいかによいものであると「理解」しても、それが本当にいいものであるという「確信」や、メーカーおよび販売店に対する「信用」がえられないうちはおいそれと購入にはふみきらないといわれるからだ。

 またこの確信段階は、iショップにおいてとりわけ重要な要素である。というのも、注文したのに商品が届かない、偽物をつかまされた、といった苦情やトラブルが絶えないiショップの世界では、お客さまの信用を勝ち取ることができればそれだけ販売力を増大させることができるからである。いいかえればそれだけ、iショップにおいては「確信」あるいは「信用」が、重要な要素になっている、といえるだろう。

 次にお客さまがとる行動は、いったい何だろうか。そう注文である。もはやここまでくれば、お客さまは一刻も早く商品を手に入れたいとわくわくする気持ちをおさえかねている状態にある。そうであれば、ここでの課題は、お客さまにできるだけすみやかに注文ボタンをクリックしてもらうことである、といえるだろう。これがAIDMAでいうActionの段階である。

  以上、iショップにおいても原則としてこのAIDMAモデルがあてはまることがわかった。そこで次章からは、このAIDMAを分析の道具として、売れるiショップに必要な表現要素を洗いだしてみよう。

(中略)

第2章 欲求喚起

欲求

 第1章では、売れるiショップを作るための基礎知識として、AIDMAモデルとコンセプトについて学んだ。この章からは、このAIDMAモデルをもとに各段階に対応する表現要素を洗い出し、同時にそれを具体化するためのテクニックについてみていこう。 まず、トップバッターは、「注意=Attention」と「興味=Interest」である。といいたいところだが、このふたつはAIDMAのところでも述べたように、検索エンジンや広告情報などの助けがあってはじめて機能する段階であり、本来iショップそのものにはこれらの段階をサポートする機能はそなわっていない。そのため、ここでは3番目の段階である「欲求=Desire」からみていくことにしよう。

 「欲求=Desire」というのは、商品にある程度関心をもちはじめたお客さまが、もう一歩つっこんで「これはよさそうだ」「欲しい」と思うようになる段階である。 この段階に対応する表現要素として、まず第一にあげなければならないのは、「コンセプトとの整合性」である。 コンセプトとの整合性というのは、わかりやすくいえば、「商品(店)らしさ」がどれだけサイト上に表現されているか、ということである。

 たとえば、ここに2軒のそば屋があるとしよう。一方は、外装から店内の雰囲気までいかにもそば屋といった雰囲気の店である。もう一方は、もと喫茶店だった建物をそのまま使っており、いまでも喫茶店なのかそば屋なのかよくわからない雰囲気の店である。人は、いったいどちらの店を選ぶだろうか。もちろん、この場合、味やサービスについては何も知らないという前提である。

 結果は、ほとんどの人が前者を選ぶだろう。それは、頭の中にあらかじめ「そば屋とはこうあるべき」というイメージがインプットされていて、人はそのイメージをもとにどちらがそば屋「らしいか」を判断するからだ。

 この「〜らしさ」を表現する際ポイントとなるのが、色づかいである。たとえば、秋の味覚ブドウの例でいえば、一般に紫がもっともブドウらしさを表現する色とされている。そのためブドウを売るサイトであれば、紫色を基調とした色づかいがもっとも効果的ということになる。 また、色にはそれぞれ固有のイメージがあり、それらを組み合わせることで、見る人の心理状態にもある程度影響をおよぼすことができるといわれている。

 こうした色のもつ力を企業のイメージ戦略として利用したのが、コーポレートカラーだ。コーポレートカラーというのは、ライバル企業との差別化をはかるため企業の理念やイメージを色の組み合わせで表現したものだが、これなども「〜らしさ」をもとにした戦略的な活用事例のひとつといえるだろう。

商品写真

 「欲求=Desire」をうながす表現要素として、もうひとつたいせつなのが、商品写真である。この商品写真のよしあしはとりわけ食品などの場合、売上げに与える影響がきわめて大きいとされている。そのことは、見た目にもおいしそうに撮られた料理の写真とそうでもない写真とを見比べてみれば、誰しも理屈ぬきで納得できるであろう。

 さて、それでは販売力のある商品写真のポイントというのは、いったいどこにあるのだろうか。 基本となるのは、「その商品を使うことで実現できるメリット、あるいは生活シーンを見せる」ということである。つまり、その商品を使うことで、どのようなメリットがえられるのかといった部分をできるだけ具体的なイメージとして見せることである。 たとえば、食品であれば、実際にそれを食べて、幸福感をあじわっているシーンを見せるべきである。そのほうが、たんにテーブルに並べただけの写真よりも食欲をそそることは、両者を見比べてみれば一目瞭然であろう。

  もっとも、モデルを起用するのは、お金がかかるし、いつでも人の姿を見せられるとはかぎらない。しかし、たとえば料理をハシで持ち上げたり、タレにつけているシーンなども効果的だし、場合によっては、料理のわきにハシをそえただけでも雰囲気はずいぶんかわるものだ。そのあたりのテクニックは、食品関係のチラシや通販カタログが参考になるので、自分で研究してみるのも面白いだろう。

コピー

 もうひとつ欲求を喚起する表現要素として重要なのが、コピー(商品説明文)である。じつのところ、iショップの売上げを左右する要因としては、デザインよりむしろコピーのほうがはるかに影響力が大きい。実際、デザインはいまひとつながら繁盛しているiショップは少なくないが、コピーがいまいちでしかも繁盛している、という店はまず聞いたことがない。

  さて、それでは、どのようなコピーが効果的なのだろうか、いくつかポイントをあげてみよう。 まずひとつは、コンセプトに沿ったコピーである。これは第1章で説明したコンセプトの作り方を言葉のレベルに置き換えたもので、ここでの基本もやはり「何を」「誰に」「どう表現するか」を明らかにすることである。ところで、コピーなどというと、慣れないうちはどうしてもその表現面ばかりに気をとられがちだが、実際には「どう表現するか」よりも「何を誰に表現するか」のほうがはるかに重要だ、ということをきもにめいじておくべきだろう。

(中略)

 

第3章 確信とアクション

確信

 アンケート調査などによると、オンラインショッピングのネックとして常に上位にランクされるのが、iショップに対する信頼性の低さである。実際、注文したのに商品が届かない、偽物をつかまされたといったオンラインショップにまつわるトラブルは、しばしばマスコミをにぎわせている。 こうした現状は、たしかに嘆かわしいことではあるが、一方、われわれはそれを逆手にとることもできる。なぜなら、信頼性というハードルをクリアすることができれば、逆にそれだけ売上をアップさせることが可能になるからだ。 そして、これが、AIDM(C)Aモデルでいう「確信=Conviction」段階における基本的な考え方でもある。

情報公開

  iショップの信頼性をたかめる表現要素のひとつに情報公開がある。なかでも、基本となるのは企業情報の開示である。もっとも企業情報の開示といっても、ここではこまかい経営上の数字はあまり必要ない。最低限、どんな会社で、どこにあって、どんな人がはたらいているのかがわかれば、それで十分である。ただし、できるだけわかりやすく、かつしたしみやすい表現をこころがけたいものである。

 企業情報の開示とともにぜひやってほしいのが、顔写真の公開である。オーナーの顔写真をサイト上で公開することは、お客さまに親近感を与えるだけでなく、経営姿勢に対する信頼の証しともなる。それは、万一トラブルが発生しても、「私は逃げも隠れもいたしません」というオーナーの意志表示であり、決意表明でもあるのだ。 このオーナーの顔写真の有無が、購入率にもおおきな影響をおよぼすことは、通信販売の関係者のあいだではよくしられた事実である。そしてこの事実は、iショップにおいてもそのままあてはまることが次第に実証されつつある。

 また情報公開ということでいえば、お客さまの声を掲載するのもそのひとつである。実際に商品を購入し、その使い心地を体験したお客さまの声ほど、雄弁なものはない。とくに、買おうか買うまいか迷っているお客さまにとって、この「先輩使用者の声」は、とりわけ貴重な判断材料となるはずだ。

(中略)

「購買行動=Action」

  よしこれを買おうと思い、いさんでレジに持っていったところ、客が何人も並んでいるのをみて「やっぱり今度にしよう」とおもった経験はないだろうか。これは、AIDMAでいえば最後の「購買行動=Action」の段階で失敗したケースである。 こうした失敗を未然に防ぎ、お客さまを確実に購買行動へと導くために必要なのが、「買う気を切らない」ことである。

  「買う気を切らない」ためにはまず商品紹介ページから注文フォームまで、誰もが迷うことなくスムーズにたどりつけるようなページ構成にする必要がある。そして、その際、できれば商品ページから注文フォームまでワンクリックでたどりつけるようにするのがのぞましい。 またもうひとつ重要なのは、注文フォームそのものの見直しである。

 注文フォームに記入するという作業は、お客さまにとってもけっこうわずらわしいものである。とくにめんどうなのが、文字の入力作業だ。そのため、注文フォームにはできるだけ記入部分を減らし、代わりにチェックボックスや選択リストを多用するといった工夫も必要だろう。

買う気をうながすテクニック

 この「買う気を切らない」から一歩進んで「買う気をうながす」テクニックというのもある。これは、買おうか買うまいか迷っている人の背中を後押ししてやるテクニックだ。具体的には次のような方法がある。

●限定

 これは「キャンペーン期間だけの限定販売」「売り切れ御免の限定販売」などのように、期間や数量を限定することで、購入の意志決定を早める手法である。

●割引

  値段を下げることでお買い得感をあおる手法。「在庫処分につき40%オフ」といった例が典型。

●プレミアム

 これは「お買い上げの方にオリジナルグッズをプレゼント!」などのように「おまけ」を提供することで、購入意欲を高める手法である。

(中略)

 

第4章 トップページ

ネットの3秒ルール

  iショップにおいてとりわけ重要なのが、トップページである。一般にウエブサイトにアクセスした人は、それが見るに値するかどうかを3秒で判断するという。 では、iショップにアクセスしてきたお客さまは何をもとに判断するのだろうか。ポイントはいくつもあるが、なかでも最大の、そして不可欠のポイントとなるのが、商品情報である。

 ここでもう一度、AIDMAについておさらいしてみよう。 第1章でも説明したように、AIDMAの流れからみるとトップページへアクセスしてきたお客さまは、商品またはショップに対してすでにある程度の興味と関心を持っていることがわかった。したがってアクセスしたお客さまがトップページに期待するのは、次の「欲求=Desire」以降に対応する情報である、ということがわかるだろう。 またそれがわかったならば、トップページで再度注意をひいたり、興味をかきたてるような情報(表現)を提示しても、お客さまにとっては、結局「邪魔」なだけということが理解できるだろう。

 その点、フラッシュ画像をふんだんに使い、なかなか商品情報が出てこないようなトップページは、それがいかにデザイン的にすぐれているとしても、iショップとしては失格だ。フラッシュ画像のすべてが悪いというわけではないが、その多くは制作者の意図とは別に、買い物にきたお客さまにとってほとんど意味のない情報だからだ。

 またまさに「ショップの扉」を意識したのだろうが、社名やイメージ画像のみで構成されたようなトップページもいただけない。それは、たとえていえばすでに入店してきたお客さまの前に、さらにもうひとつ重々しい扉を示し、そこで再度「入ろうか入るまいか」を決めさせるようなものだ。わざわざ来店してくださったお客さまにとってみれば、それではまるで門を閉められた上で「帰れ!」といわれるようなものだろう。

(中略)

顔が見える店

 「店主&スタッフの顔写真」を出すというのは、前章でも述べたように、ショップの信頼性を高めるひとつの方法である。だが、そこにはおそらくもっと商売の原点にかかわる重要なポイントがある。それは、「顔が見える」ということだ。 「顔が見える」ということは、iショップに限らず、一般のお店にとってもたいせつな要素である。

 「顔が見えない」というのは、たとえていえば店員のいない無人店鋪のようなもので、そこはおよそ人の気配がなく、しかも呼べど叫べど何の返事もないきわめて無機的な場所といえるだろう。もちろん無人店鋪であっても、自動購入システムのようなものを構築すれば、そこで商品を売り買いすることは技術的に不可能ではないはずだ。だが、仮にそのような店があったとしても、それではまるで自動販売機のようで、なんだか味気ないと思うのは私だけだろうか。

  そもそも買い物というのは、一種のコミュニケーションである。売り手と買い手との間で行われる、価格をめぐる緊張感のあるやりとり。最終的な妥協点をさぐりあてた時の喜び。そしてその結果、両者の間に生まれる信頼感…。買い物というのは、本来そうした人と人とのコミュニケーションそのものであり、買い物の楽しみというのもまたそうした売り手と買い手との間で交わされる親密なコミュニケーションーーー心と心の結びつきと無関係ではないだろう。

  自動販売機が味気ないと感じられるのも、おそらくはそこに心を通わせるコミュニケーションがないからであろう。 思うに、顔の見えるトップページというのは、販売促進上有効な表現テクニックのひとつであるばかりでなく、商売の原点にも深くかかわるきわめて基本的な要件のひとつなのではないだろうか。その点、売れているiショップのほとんどが例外なく店主の顔写真を出していることは偶然ではない。

 彼らiショップのオーナーがみずからの顔写真を出すのは、それが売上アップにつながることをすでに経験則として知っているからであると同時にそれが商売の原点であることを、まさに商売人として体得しているからであろう。 その意味で、トップページに正面から向き合った際、どれだけその店の「顔」がイメージできるかは、iショップのよしあしを判断するひとつの基準となるだろう。

(以下、省略)


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